ギリシア語

Greek

概要


ギリシア語は印欧語族に属する言語であり、古代より欧州文化の基盤を形成してきた古典語のひとつです。その語彙は、ラテン語と並んで多くの欧州諸語に流入しており、現代においても新語の創出に頻繁に用いられています。

古典ギリシア語は、近代以降「カサレヴサ(Katharevousa)」と呼ばれる文語体として継承され、国家機関や教育現場で使用されてきました。しかし、日常的に話される口語「ディモティキ(Dimotiki)」との乖離が次第に問題視され、1974年の民政化を契機に、ディモティキが正式な公用語として採用されました。

この言語政策の一環として、ギリシア政府は現代ギリシア語の正書法を統一し、従来複数存在していたアクセント記号を単一のトノス(´)に簡略化するという大胆な改革を断行しました。これは、言語の標準化を通じて教育と行政の効率化を図ると同時に、国家のアイデンティティを再構築する試みでもありました。

簡体字やハングルの整備と同様に、ギリシア語の変遷は「言語=政治」という命題を如実に示しています。思想教育や国民統合の手段として、政権にとって都合の良い言語形態が選択・運用されてきた歴史があるのです。

なお、古典ギリシア語は聖書言語としても根強い人気を誇ります。新約聖書は「コイネ(Koine)」と呼ばれる共通語的な方言で記されており、宗教的・学術的な文脈において今なお学ばれ続けています。

本稿では、こうした歴史的背景を踏まえつつ、現代ギリシア語の構造と機能について考察していきたいと思います。